忍者ブログ
作品うp用ブログ。 油彩・立体がメイン。美術に関するあれこれも書いていく。twitter⇒http://twitter.com/2501kai
71  70  69  68  67  66  65  64  63  62 
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

上野にリニューアルオープンした東京都美術館で開催中の、マウリッツハイス美術館展に行ってきました。
平日に行きましたが入場まで40分待ちです。やっぱりね!とはいえあのダ・ヴィンチ「受胎告知」の時の悪夢に比べればどうということはありませんやな。待機は殆ど冷房の効いた館内でしたし。とはいえ休日に行ったらどうなっているのか・・恐ろしくて確かめる気にはなれません。

今回の展覧会は17世紀オランダの経済発展の時期を扱っています。海外との貿易によって裕福になったため、絵画の雰囲気は全体的におおらかでのびのびとしています。後述するベルリン美術館展で、前後の時代の絵画と比較してみると特にその傾向は顕著です。展覧会では、美術館の歴史、風景画、物語・歴史画、肖像画、静物画、風俗画と6つのセクションに分かれていて、オランダ黄金時代の絵画市場がどのようになっていたのかがわかります。

特に充実しているのは肖像画のエリアでした。フェルメールは勿論、同時代に活躍したレンブラントやフランス・ハルスの絵画が見られます。この頃の肖像画は裕福になった商人たちからの注文を受けて制作されるケースが殆どだったようなので、依頼主の容貌を忠実に再現しようとする反面、絵画の中に“表現をしよう”という意識が見て取れます。王族や貴族の肖像画のような動きがなく気取った微笑を浮かべている作品は少ないです。大概その人物の性格を現すような表情・仕草が生き生きと描き込まれていて、今にも画家と依頼主の楽しげなやり取りが聞こえてきそうでした。
また、貿易が盛んであるということは他国の品物が自国に入ってくるということ。この時代には特に植物が多く入ってきて関心が高まっていたようです。そこから花をモチーフに静物画を描くことが盛んになりました。そういえばチューリップバブルもこの時代でしたよね・・。「真珠の耳飾の少女」の頭に巻かれたターバンも、異国文化への関心の産物であることには違いないでしょう。
そんなわけで、絵画ジャンルの中でも今まで低俗とされてきた肖像画、静物画、風俗画、が急速に発展していく様子がよくわかる展覧会です。

また、注目したいのは、キャプションに書かれている「何に」描かれたのかという点です。実はこの時代以前の絵画は板に描くのが主流でした。しかし、17世紀になって貿易が盛んになってくると、船で使う麻布が手に入りやすくなった関係で、板より軽い、布のキャンバスが定着していくという背景があったようです。1世紀近くしか続かなかったとはいえ戦争も無く、経済的にも豊かであるということが絵画の発展に大きく寄与しているのを実感させられます。

個人的には静物画のエリアをもう少し広く取って欲しかったですね。私は静物画、とりわけヴァニタス画(生命の儚さを示す静物画)が大好きで、オランダ絵画といえば静物画でしょう!という人間ですので・・。今回は先程も言った様に「真珠の耳飾の少女」を筆頭とした肖像画に力を入れた展示でしたから望むべくも無いことですが。その今回のメインディッシュ、「真珠の耳飾の少女」は見るのに20分ほど待ちました。待機列と、飛ばして見たい人向けの列が設けられていたので会場の動きは比較的スムーズだったように思います。少女の肌は非常にパウダリーで繊細に描かれています。タッチを残して描かれた衣服がいい対比になっていました。会場はリニューアルしただけあってかなり見やすくなった印象。今度人の少ない時に行ったら導線も確認してこようと思います。

では次はベルリン国立美術館展です。長くなりましたので下に畳みます。

こちらは国立西洋美術館で開催中です。真珠の耳飾の少女に人が流れているせいか、こちらの混みは大したことありませんでした。比較的じっくり見られます。イタリアの絵画を中心に4世紀分(ルネサンスから初期近世まで)をまとめてあるので、副題の通り、見やすい展示となっています。

聖母子像、肖像、マニエリスムの身体、17世紀黄金時代、啓蒙の近代、素描、18世紀後半といった章立てになっていまして、これら全ての感想を述べていてはページが長大になるだけです。特に印象の強かったものを挙げていきますと、マニエリスムの身体、の章はかなり見ごたえがありました。ルネサンスからバロックへの過渡期にあたるため、上品ながらも嫌味の無いダイナミックさがあります。かの有名なルクレツィアも見ることが出来まして、こちらもかなり嬉しかったのですが、ガイアの人食い彫刻は迫力あってこれを見られたことで来た価値はあったなと思いました。

この展覧会は彫刻及びレリーフの展示が多くてとても楽しかったです。特にレリーフは、私が専門外のためあまり見る機会がないもので、非常に興味深かったです。小さな画面にいくつもの事物が折り重なるように彫られていて、一体何を使えばこんなミニチュアールのような繊細な彫りが出来るのか想像も付きません。しかし、彫り方によって影(絵画で言うところの輪郭線)のでき方が異なっていて、対象の捉え方だけでなく、そうしたところでも表現に違いが出るのだと感心しました。

それから巨大なタペストリーが2枚展示してありましたが、これもなかなか迫力がありました。大きさだけでなく、細かい織りで絵画同然に仕上げられたそのクオリティに、思わず呆然と立ちすくんでしまいました。
また、素描のエリアが個人的には非常に参考になりました。画家それぞれものの捉え方や考え方が異なっていて、同じ人物の衣服を描くのでも、ハイライトに注目して形を捉えるのか、シャドウに注目して形を捉えるのかで表現方法が全く異なっていてなかなか興味深いです。・・ミケランジェロの素描は流石と言うしかなかったです。

あと、常設展内にある「クラインマイスター展」も見ました。疲れる展覧会を2つも見た後にこの極小版画を見て本当に足が棒になるかと思った。会場には虫眼鏡が用意してあって、それを使って鑑賞できるのですが、私もコレクションしたくなるほど素晴らしい版画達でした。切手にして発行してくれたらコレクション余裕です。数センチの中に描かれた世界・・本当にこれどうやって描いたのかと。職人達は余程目が良かったのでしょうか。聖書の版画シリーズはストーリーを小さい中によく表現してあるので、これを見ていれば聖書の話の大筋がわかってしまいます。
本当はもっと感想を書きたいところなのですが、このときは本当に疲れていまして・・許してください。


結論:展覧会は1日に1つ

拍手[0回]

PR
COMMENT
NAME
TITLE
MAIL
URL
COMMENT
PASS
カレンダー
04 2024/05 06
S M T W T F S
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31
フリーエリア
最新CM
最新TB
プロフィール
HN:
神野 戒
性別:
非公開
ブログ内検索
最古記事
P R
忍者ブログ [PR]
"神野 戒" WROTE ALL ARTICLES.
PRODUCED BY NINJA TOOLS @ SAMURAI FACTORY INC.